2006年4月18日火曜日

渡辺保の劇評 こんぴら歌舞伎金丸座

しかし海老蔵でいいのはこの後である。まず紋服に着替えて小刀を持った時のおかるを見て思い入れの情愛である。これはたしかに「落人」をやった勘平の色気になっているのは大手柄。いささか前髪風の幼さはあっても、これが海老蔵の勘平の特色が出ている。 私が冒頭にふれた薄幸の貴公子の運命悲劇というのはここらからはじまる。しかし勘平は貴公子でもなんでもない。たかが塩冶家で百五十石の侍であり、いまは狩人にすぎない。それがいかにも貴公子に見えるところが海老蔵の特色である。そう見えるのは、このいかにも儚な気な青年が運命にとらえられて死ぬほかないドラマが鮮明だからである。そこに海老蔵の独自の勘平の人間像がある。いかにも悲愁に閉ざされた、不幸で、哀れな青年である。こういう勘平を私は見たことがなかった。 (2006年4月金丸座)

海老蔵初役の勘平は観る人によって様々な意見があるようです。私も新しい発見がありました。近い内にまとめたいと思います。



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