2006年6月11日日曜日

渡辺保の劇評 6月三越歌舞伎

獅童の与兵衛がいい。むろんまだ足りないところはいくらもあるが、歌舞伎風の和事のジャラジャラした味わいと、与兵衛の現代にも通じる人間ドラマが、この人のなかで適度のバランスを保っている。舞台が小粒なのは仕方がないので、これからはこのバランスを大事にしてスケールをひろげていけばいい。「千本桜」の忠信などよりずっといいのは、現代の役者にとっては、こういうドラマが入りやすいからだろう。 徳庵堤では三代目延若にちょっと似た、しゃくれた顔がよくこの役にあっている。 河内屋のふて腐れた具合はもっと手強くしたほうが、この男の悲劇がうかび上がる。 この人一番の出来はやはり殺しで、「不義になって借して下され」があきらかにウソとわかるところと、刀に手がいってからお吉の背後に立つ、人が変ったような殺気と凄味。(2006年6月三越歌舞伎)



「車引」のような役は出てきただけで勝負というものですから、難しいと思います。



ドラマ性があるほうが、役づくりしやすいのでしょう。