2006年6月13日火曜日

小玉祥子の劇評 六月大歌舞伎

幸四郎の長五郎が重厚で、染五郎の長吉は、まっすぐな気性がよく表れた造形。長五郎の低音と長吉の高音。2人の対照が利いた。



 夜の最初が「暗闇の丑松」。幸四郎は、人間不信から殺人に走る丑松の心情の変化を巧みに出し、福助のお米が、周囲に翻弄(ほんろう)される女の悲しみを表現した。板橋宿での2人の再会が切ない。ただし、2幕幕切れの舞台正面にお米の遺体を持ってくる演出はどうか。戸板で通りすぎるのを丑松が見送るだけで、意は通じると思う。段四郎の四郎兵衛、秀太郎のお今の夫婦が良く、染五郎、蝶十郎が好演。

幸四郎は分かりやすくするために演出を変えたそうだが、観客に想像させるほうがお米の死の悲しみは増すと思います。序幕も周りの人の会話から状況を知るという演出ですから、ここも同じようで良いのではないでしょうか。 

続いて「身替座禅」。菊五郎の品位と色気ある右京と仁左衛門の夫を愛してやまない姿がかえってこっけいに映る玉の井の取り合わせがいい。

完成品といった出来でした。



毎日新聞 2006年6月12日 東京夕刊(MSN-Mainichi INTERACTIVE 歌舞伎)