2006年6月17日土曜日

小玉祥子の劇評 三越歌舞伎

獅童の与兵衛は、前半は甘く優しげだ。半面、思い通りに事が運ばないと、突如として怒りをあらわにし、義父、徳兵衛(寿猿)や妹、おかち(鴈成)にも手をかける。虚勢を張っているわりには気は小さく、武家のおじ、森右衛門(寿治郎)に叱責(しっせき)されれば、身をすくめるばかりだ。 どこにでもいそうな人間を、獅童は素直に見せる。勘当を受けた後の徳兵衛と母、おさわ(竹三郎)の嘆きを盗み聞き、現状を反省したのもつかの間で、次にはお吉(笑三郎)に金をせびり出す。ここからの変化が不気味である。不義になれと迫り、だめとなると殺害を決意。うっとりとしたような表情で刃物を振るう。精神のぶれが無理なく描き出される。 笑三郎は色気があってしっとりとした世話女房ぶり。誰にも優しい面倒見の良さが招いた惨事を説得力あるものとした。段治郎の七左衛門が手堅く、竹三郎が息子かわいさから甘やかしてしまった母をうまく見せる。猿弥、欣弥が好演。22日まで。【小玉祥子】(MSN-Mainichi INTERACTIVE 歌舞伎)

昨今、テレビのワイドショーや週刊誌に取り上げられる事件と同じで、このような状況におかれた当事者達の弱さをうまく描いています。