2006年11月1日水曜日

三津五郎の今月の役どころ

◆「源太」東京の本興行では初めてになります。なんともいえずいい踊りですが、きりっとしたなかにも柔らかさがなければならず、また戦物語から廓話へのなめらかな変化も要求される、なかなか難しい踊りです。若い頃には手も足も出ませんでした。この頃ようやく、30年前に三津蔵師匠に教えられたことが分かるようになってきました。色気があって滑らかで、なんとも言えぬ味わいのある世界。そんなものが舞台に漂えばいいな、と思っています。今回は「先代萩」の序幕で頼兼が紫の同じような衣裳を着るので、三代目の錦絵にならい、藤色の着付にしようと思っています。



◆「願人坊主」まったくの初めてです。父が昭和55年の第1回「登舞の会」で復活した踊りです。そのときは「源太」「老女」「願人坊主」の3段返しで、「源太」は私が勤めていました。六代目菊五郎が初演して人気舞踊になった清元の「うかれ坊主」の原曲です。六代目は常磐津の「願人坊主」を清元になおし、さらに清元の「納豆売」の一部を付け加えて、新しく「うかれ坊主」としたのです。それが人気曲となり、この常磐津の原曲の方は忘れ去られていたものを、父が復活したという訳です。ですから今回歌舞伎の本興行での上演は、おそらく江戸時代の三代目三津五郎以来になるのではないかと思われます。「源太」との変わり目を鮮やかに、「うかれ坊主」よりややリアルに汚い、「願人坊主」ならではの味わいを出したいと思っています。(今月のスケジュール)

歌舞伎座の顔見世では朝から晩まで大活躍の大和屋さんです。5役勤められる中、「源太」と「願人坊主」がやはり気になる演目です。踊りこんだ身体から滲み出る味わい、楽しみです。