2007年3月8日木曜日

渡辺保の劇評2007/3歌舞伎座

芝翫の静御前が古風でたっぷりと豊かな大きさ。これだけ古風な女形は今日他にはないと思わせる芸格。踊りもうまく、菊五郎の忠信とイキも合っているのに、惜しいことにこの人に一つの病がある。すなわちリアルに動き過ぎるところがあって、折角の踊りが説明的になって興味が中断する。たとえば花道から本舞台へ来るとき、下手の書割りから清元の山台まで桜をながめ廻す白々しさ。あるいは「天井抜けて」でこうですか、これでいいのですかという説明。この人にしてこの病い。ああ、惜しみても余りある。(2007年3月歌舞伎座)

今月も通し狂言で、豪華な顔ぶれです。



「鳥居前」は”初音の鼓がずっと物語の最後につながる重要な一幕で、忠信を同じ役者が務めるのが分かりやすいと思います。この幕、梅玉の義経も良く、福助の静も哀愁があって上出来、菊五郎の忠信も力強く、均整のとれた一幕でした。



「渡海屋」では三人の主人公の一人知盛の芝居。幸四郎は大きさでは良いが、二代目松緑のような豪快さはないように感じました。



「吉野山」流石に見ごたえある配役でした。芝翫の静御前と菊五郎の忠信は正に主従の道行になっていました。芝翫の踊りが説明的で白々しいと渡辺保氏が言っておられますが、私も「藤娘」「保名」と見たときは、何であんな風に説明するのだろう?折角の踊りが台無し・・・と思いました。しかし今回は賛成できました。吉野の山中を歩いていて花の美しさに、思わず見とれ「わーきれい!」と囁いているかのよう、あたりには鳥のさえずりが聞こえる。忠信の出までに、吉野山というイメージを作っていました。背景に桜の絵がなくても、想像できるようでした。そして菊五郎の忠信とも息が合って良かったです。



「木の実」「小金吾討ち死」「すしや」仁左衛門の権太はこの前見た時に良かった印象があり、今月もやはりうまいと納得しました。でも今度は音羽屋型で見たいと思います。あの松緑の「父っつぁん、父っつぁん、父っつぁん、これ親父様・・・」が頭に浮かんで、見たくなってしまいました。



「四の切」菊五郎の本物の忠信と狐忠信との演じ分けが鮮やかでした。ケレンは体力的にちょっと見ていてヒヤヒヤ?朝から晩までご苦労様とねぎらいたいです。今日は大向こうの「音羽屋!」が「おめでとう」の意に転じていたような。



「奥庭」は通しで演る場合は収まりが良いですね。



(5日に昼、7日に夜観劇)