2007年6月7日木曜日

渡辺保の劇評 2007/6歌舞伎座

八年ぶりの仁左衛門の「御浜御殿」が名品。六月歌舞伎座昼夜通して一番の、いや最近の歌舞伎座の見ものである。 その口跡、その調子、綱豊を一代の当り芸としていた故人寿海にまさるとも劣らぬ名調子で見るものを陶然とさせる。第一場のお浜遊びはさしたることもなかったが、第二場の新井白石との対話の冷静かつ厳しく現実的な音調、つづいて第四場の富森助右衛門との情熱的な対決。ある時は低く、ある時は高く、またある時は早く鋭く、あるいはゆっくりと、感情に訴え、論理を追い、さしては引き、引いては返す波の如く、千変万化の面白さである。芸の円熟、技法の結果いうまでもないが、私が感心したのは単に技術の高さではない。技法の駆使と綱豊という一個の人間の真情が一体になっている点である。(2007年6月歌舞伎座)

最近よく見ている印象ですが、仁左衛門さんは8年ぶりとのこと。新井白石との対話、富森助右衛門とのセリフの応酬、誠に良かったです。高座に座っている姿は綱豊卿そのまま、中から出てくる心情が滲み出ていました。