2008年11月11日火曜日

渡辺保の劇評 2008年11月歌舞伎座

南北の主題はまさにここにあって、南北はそういう武士のプライドを批判したのである。赤穂義士だの忠臣だのといったところで源五兵衛は所詮殺人者ではないか。殺人者でも義士になれるのか、というところに南北のブラック・ユーモアがあり、さらにその指摘は赤穂浪士の仇討に対する批判にもなる。源五兵衛は多くの人を殺して、今また、新しい殺人に向う。仇討も一皮むけば殺人にすぎない。これは社会制度によって公的に認められる殺人――戦争から死刑に至るまでの、現象への批判である。そこが南北の新しさであり、現代性である。 (2008年11月歌舞伎座)

このお芝居はさらっと見たのでは理解できない。忠臣蔵と四谷怪談の世界がない交ぜになっているだけでも複雑なのに、ブラックユーモアを解するまでは時間がかかると思います。何よりも赤子を殺すシーンは、舞台を正視できません。最近社会を騒がせている猟奇殺人を連想し、ぞっとしてしまいます。渡辺先生ではありませんが、仁左衛門さんでは綺麗すぎ?です。



私も歌昇さんの実直な家臣が、砂漠のオアシスのように感じました。



夜の部「寺子屋」で一つ疑問に思った箇所がありました。松王と千代が我が子の最期の様子を聞き、泣くところで、千代が夫のヒザに右手を置き左手は袂で泣き崩れる~千代も大泣きしますが離れた位置で泣いていたと思いますが、型の違いでしょうか。皆様のご意見お聞かせ下さい。



「船弁慶」は豪華キャストですが、菊五郎は「土蜘蛛」のほうが良いですね。前シテの静は立ち役が多い昨今では窮屈そうに見えました。菊之助時代は静が本役でしたのに・・・



時蔵さんは一門の方とご一緒に、祖父時蔵の50回忌を立派に務めていらっしゃいます。