2008年11月16日日曜日

渡辺保の劇評 国立劇場11月

欠陥の第一は、世話物らしいリアリティがないことである。たとえば第一幕第一場不忍池出合い茶屋。幕が開くといきなり新内仲三郎の出語りで、白塗りの染五郎の神谷芳之助の道行風の出になる。「かさね」や「十六夜」と同じ趣向だが、それはいいとしてもそのあとがいけない。無人の一座ということもあるだろうが、出合い茶屋の人間が誰一人出て来ず、さながら荒野の一つ家の如くまるでリアリティがない。世話物の楽しさがない。それにこういう怪奇物は細かい日常の描写があって、そこへ不意に非日常があらわれてこそサプライズも怪奇も深まる。 (2008年11月国立劇場)

渡辺先生のご指摘に納得しました。いわゆる世話物のお芝居は物売り、通行人、下働きの者などが登場し、雰囲気作りをします。そしていくらシンが良くてもワキが拙いと、その芝居は成功しません。今回は主となる役の方が殆どで、脇があまりいませんでしたので難しかったのでしょう。



乱歩を歌舞伎にという着眼点は大変面白いので、練り直して再演して欲しいです。