2010年10月24日日曜日

渡辺保の劇評 2010年10月国立劇場

こういう慶喜を見たのは初めてだった。「将軍江戸を去る」の慶喜は名調子で人を酔わせ、感傷で人を泣かせる芝居ではないのかもしれない。それよりも時代の分岐点に立った人間の悲劇的な精神のドラマであり、一人の人間がどう悟りを開き、人生をどう生きるかのドラマである。それだからこそ何百年前の一人の人間の体験が私たちにも共有されるのである。(2010年10月国立劇場)
私が過去観た慶喜では寿海が一番印象に残っています。足下も覚束ない晩年の寿海でしたが、澄んだ声の名調子、江戸を去っていく悲劇の将軍という色が濃かったと思います。今月の吉右衛門の慶喜はもっと深い精神性のドラマを感じました。正に渡辺氏が書かれて居られる通りだと思いました。
勝小吉のほうは初日より1週間ほど経っているのにセリフがスムーズではありませんでした。故に芝居の運びもモタツキます。梅丸君の麟太郎のうまさで救われました。実に良い麟太郎でした。国立劇場賞は彼でしょう?

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