2012年8月14日火曜日

渡辺保の劇評 2012年8月 新橋演舞場

海老蔵の白眉は大詰の白洲。それも刃傷の凄まじさ、鬼気迫る凄味である。 いつもの「先代萩」の刃傷と違って、二重、平舞台、間の白洲梯子を使うためにその凄まじさが立体的になり一つ一つのきまりが浮き彫りになった。こうしてみると海老蔵には天性他の人の仁木にはない殺気、凄味があることがよくわ かる。海老蔵ファンならずとも歌舞伎ファンの堪能するところ。目の覚める心地であった。(2012年8月新橋演舞場)
南北の狂言を昼夜に並べた今月の演舞場。お芝居としては昼のほうが面白いです。夜の部は一人の役者が十役を務めるというのがウリですが、目まぐるしく今は何の役かな?と追っているうちに過ぎていってしまいます。これが終わりまでだと何の感動も残りませんが、後半、政岡、仁木弾正の芝居をじっくりと見せてくれるので後味は悪くありません。福助の桜姫、海老蔵の権助、愛之助の清玄、この配役で再演を重ねてそれぞれの成長を見たいものです。海老蔵の仁木の凄み、鋭い殺気は正に身震いします。この天性を活かして一回りも二回りも大きい役者に成長して欲しいです。