2012年10月9日火曜日

渡辺保の劇評 2012年10月 新橋演舞場

「判官御手」は、弁慶を真直ぐ見て首を傾げたりしないにもかかわらず、 「その手を上げなさい」といっているのがハッキリわかる。気持ちで芝居をし て手はそれに従って出すだけだからだろう。こんなに気持ちの溢れている判官 を久しぶりに見た。  しかし私が最も感心したのは引っ込みである。笠に手もかけず振り向きもせず、しかし花道にかかって自然に歩みが遅くなって、笠の内でスーッとあるか なきかに一礼する。思わずホロリとした。ここでホロリとするのは、やり方は 違うが梅幸以来である。(2012年10月新橋演舞場)
私は勧進帳で一番ぐっとくる所がここなのです。判官御手を取りたまい~品の良い佇まい、情けある御大将ぶり、弁慶ならずともホロッとしてしまいます。