2013年5月13日月曜日

犬丸治の劇評 2013年5月 歌舞伎座

第三部「石切いしきり梶原」。歌舞伎には表情ではなくハラ(役の性根)をにじませる「思い入れ」という技法がある。中村吉右衛門の梶原はその頂点と言って良い。源氏ゆかりの六郎太夫ろくろだゆう(歌六)と梢こずえ(芝雀)の親娘おやこが、金策のために梶原に名刀の目利きを頼む。前半は六郎太夫と買い手側の大庭兄弟の間で梶原はジッと耳を傾けているだけだが、父娘への同情、大庭の強欲への怒りなど心の運びが無言のうちに手に取るよう。梶原が、大庭の弟の俣野(又五郎)が六郎太夫を試し斬ぎりにするというので、助けねばと一瞬気を変え「無礼でござろう」と切り返す。その呼吸が実に見事。([評]柿葺落五月大歌舞伎(松竹)…「寺子屋」胸えぐる痛み : 伝統芸 : 舞台・伝統芸 : エンタメ : YOMIURI ONLINE(読売新聞))
 平成歌舞伎の「いま」の水準の高さを示す好舞台。