2013年8月4日日曜日

渡辺保の劇評 2013年8月 歌舞伎座第三部

三津五郎はどこかの談話で勘三郎死して私は二人分働かなければならないと いっていた。今、彼は勘三郎の遺児勘九郎を太郎冠者にして、勘九郎の役を踊 っている。ちなみに今日の初日、踊りのかかりで「中村屋ッ」と声がかかった。 三津五郎が立っているのにである。大向うは間違ったのではない。われひとと もにそこに勘三郎を見て三津五郎の心中を思うからである。今日三津五郎は二 人分の重荷をもって歌舞伎座の大舞台を背負って立っていた。  この踊りを見て、彼を思いこれを思うと胸が熱くなった。しかし今日の三津 五郎の出来はそんな感傷からのものではない。踊りとして見れば、これを見ず して日本舞踊について語ることはだれにも出来ないだろうと思う出来である。 私が「絶品」というゆえん。(2013年8月歌舞伎座第三部)
予想に違わず「棒しばり」が素晴らしい。手を縛られ不自由な体勢でありながら、おかしみを品よく表現し、自由自在に五体を使って踊る三津五郎の次郎冠者は絶品とのこと。一幕見をお薦めします。今月これだけは見逃せません。