2015年10月11日日曜日

長谷部浩の劇評 2015年10月 新橋演舞場

演出を中心になって勤め、ルフィとその難儀を救うハンコック、そして「止め男」に相当するシャンクスを演じる猿之助の奮闘公演といえば紋切り型に過ぎるだろうか。麦わら帽子を背負い、少年の無垢と勇気を代表するルフィは、まさしく適役で、役を生き生きと演じている。衣裳や化粧などがコミックに忠実なデザインでありながら、歌舞伎として違和感がないのは驚くべき翻案である。またし、若女方に相当するハンコックは、ロングドレスを着るなど工夫をこらしつつ、後ろ姿とはいえ裸体も見せるから、これもまた忠実といって差し支えない。
単にこの舞台はコミックの歌舞伎化にとどまるのではなく、歌舞伎演出とは何か。歌舞伎役者の技芸とは何かに対する鮮烈な問いかけともなっている。少年コミックの典型で物語は、若い世代の成長譚の枠組みを取るが、このスーパー歌舞伎を通して、出演の役者たちがより自由で生き生きとした役作りの愉しさを身にまとうのではないか。そんな期待をこめて『ワンピース』を観た。(TheaterGoer Directoy    長谷部浩の劇評)
歌舞伎として違和感がないというのは大成功でしょう。巳之助、隼人等がイキイキと演じているのもうなずけます。