2016年3月10日木曜日

天野道映の劇評 2016年3月 歌舞伎座

夜「金閣寺」の雪姫が殻を破ったようだ。雪姫は両手を縛られ、足で桜の落花を集めて鼠(ねずみ)を描き、最後に腰を沈めて片足の爪先(つまさき)で目を入れる。その「く」の字にねじれた形がはっとするほど父に似ていた。死地に追い込まれた誇り高い姫君が運命に抗(あらが)う。その姿がそこにあった。  落花の鼠に縛(いまし)めの縄を食い切らせ、夫の命を救うため花道を船岡山へ急ぐまで、父が乗り移ったかに見えた。幸四郎の松永大膳、仁左衛門の此下東吉の配役で、これは名舞台である。((評・舞台)歌舞伎座 五代目中村雀右衛門襲名披露「三月大歌舞伎」 雪姫に受け継がれる父の芸:朝日新聞デジタル)
口上は雀右衛門の人柄を反映して温かいとのこと。