2016年6月7日火曜日

渡辺保の劇評 2016年6月 歌舞伎座第二部

梶原が引っ込んで弥左衛門に刺 されて手負いになるが、この手負いの物語が白眉である。ここの幸四郎はせり ふ廻しの技巧やイキのよさで聞かせるのではなく、人間味、情感、情景描写の うまさで聞かせる。そのために権太一家の悲劇目の当り。調子のいい人だけに 「維盛卿に生き写し」が聞かせるし、善太の「おっかぁと一緒に」のあどけな さ。今さらながら政治の犠牲になった一家の悲惨が心に滲みる。ここらが幸四 郎の円熟のうまさ、身上である。
秀太郎の小せん、染五郎の維盛、猿之助のお里、揃って上出来。

幸四郎を囲んで顔ぶれが揃っている点ですでにふれた通り第二部が一番である。(2016年6月歌舞伎座第二部)

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