2016年10月11日火曜日

渡辺保の劇評 2016年10月 歌舞伎座

この後が芝翫この一幕中第一の出来になる。すなわち相模にこの首を「藤の 方へ」で首をずから取って頬摺りせんばかりの愛着を見せておいて、二重縁端 三段のところへ出る。そうして相模が取りに来るまで放心したように首を持っ たまま上手のあらぬ方を見る。ここがうまい。息子を殺しての感無量、いまさ らながらの茫然自失、いうにいわれぬところが出る。そこへ相模が来る。熊谷 が右足を三段に落とす。二人で首を持ち合う。熊谷は首ごと相模を抱かぬばか り。三段を登って泣き上げる相模の白い顔、上から俯く熊谷の赤い顔。この対 照、この心持が二人の愛し合った人生、苦労の果てに子を育ててきた人生が出 て実にいい。ここがこの一幕一番の秀逸。(2016年10月歌舞伎座)
熊谷夫婦の情愛がひしひしと伝わってきました。芝翫型のほうが好きになってきました。

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