2017年3月17日金曜日

矢内賢二の劇評 2017年3月 歌舞伎座・国立劇場

歌舞伎座は片岡仁左衛門の「義経千本桜 渡海屋(とかいや)・大物浦(だいもつのうら)」。銀平の立派さと爽やかさは言うまでもなく、せりふは明晰(めいせき)を極めながらも義太夫らしい濃厚な味。義経にかけて言う「おかくまい申したら何とする」や女房お柳(りゅう)に暗に戦の用意を促すせりふも説明的にならずに真意がよく伝わる。知盛も同様で、凄絶(せいぜつ)の中に端然と死を受け入れる理(ことわり)が鮮明。中村梅玉の義経は情感、品格ともに一級品で、中村時蔵のお柳実は典侍(すけ)の局(つぼね)も引き締まった上出来。
国立劇場は三年前に画期的な成果を挙げた「岡崎」を中心に、股五郎の逃亡と志津馬の出立を描く「円覚寺」を新たに復活して「伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)」の通し上演。やはり「岡崎」が濃密なドラマを構築して圧巻。中村吉右衛門の唐木政右衛門は抑えた演技の中に敵を目前にした切迫感、犠牲をいとわぬ凄(すご)みと苦悩とがほとばしる。政右衛門を終始見つめる中村歌六の山田幸兵衛も深い愛情と葛藤に満ちた傑作。(東京新聞:<評>歌舞伎座・国立劇場 実のある好演:伝統芸能(TOKYO Web))
義太夫狂言の奥深さ、役者各々の工夫などが良い結果になった舞台でした。

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