2017年6月9日金曜日

河村常雄の劇評 2017年6月 歌舞伎座

最後は「一本刀土俵入」で、今月一番見応えがある舞台。力演の役者がうまくぶつかりあったからであろう。  幸四郎の駒形茂兵衛は「取手の宿」で、夢と希望と空腹の純なふんどし担ぎ。10年後、世話になったお蔦に恩返しに行く「布施の川べり」からは、社会の裏を知ったやくざになっている。きりっとしたやくざになっても強いだけでなく、優しさがあるのが、この人らしい。  猿之助のお蔦。茂兵衛に金を恵む酌婦の時は地声に近い声で荒んだ様を出している。能の如き演技。「お蔦の家」では一転、娘思いのいい母である。頭突きで茂兵衛を思い出す件もうまい。猿弥の船戸の弥八もいい。「取手の宿」では単なる無法者ではなく、軽薄さがよく出ており、「布施の川べり」ではひとかどの親分だ。10年の歴史がくっきり刻まれているから芝居が面白い。(河村常雄の新劇場見聞録)
幸四郎の茂兵衛が良いとのこと。知性が邪魔するかと思っていましたが、お役をきっちり構築して臨んだということでしょう。猿之助との相性も良いようです。

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