2018年7月6日金曜日

長谷部浩の劇評 巡業東コース 江戸川総合文化センター 

皐月の「お前に一生連れ添えば、楽の出来ぬ私の身体、星影さんんいこの身を任せ、生涯楽に暮らすが得」を真に受けて、自らの言葉に酔って、自らを追い詰めていく男の心情を、様式に頼り切らず、写実を追求していく。その緻密な組み立てによって、物語の浅薄さをとりあえず置いて、観客はもっとも大切な妻を失ってしまった後悔。いかに困ったとはいえ、妻を売り物買い物の傾城にしてしまった無念が、ひしひしと伝わってくる。
特筆したいのは、『喜撰』といい『文屋』といい、この『高坏』といい巧まざる愛嬌が菊之助にそなわってきたところだ。時分の花はいつか衰える。けれど、そなわってきた愛嬌は、決して失われることはない。六月三十日夜の部所見。(長谷部浩の劇評  TheaterGoer Directory)
この愛嬌も嫌味がなく品が備わっているのが菊之助の良いところです。