2018年9月10日月曜日

渡辺保の劇評 2018年9月 歌舞伎座夜の部

これまでの吉右衛門の俊寛は、この一家を守る家父長の責任から来る覚悟が 強くおもてに出ていた。しかし今度はそれが責任だけではなく愛情になった。 今度の俊寛は千鳥を実の娘のように愛している。だから、責任感よりも絶海の 孤島に一人残る孤独の恐怖よりもなによりも、その千鳥、ひいては家族と別れ るドラマになった。
しかしこの一幕、なんといっても葵太夫と寿治郎の竹本が、マクラの「そも そもこの島は」から幕切れの「一人を捨てて」まで近松の名文をよく生かして 芝居を支えた。(2018年9月歌舞伎座夜の部)