2018年11月16日金曜日

長谷部浩の劇評 2018年11月 歌舞伎座昼の部

昼の部は何と言っても、菊五郎の清心、時蔵の十六夜に、吉右衛門が俳諧師白蓮で加わる大顔合わせの『十六夜清心』が話題となる。菊五郎は黙阿弥の台詞が手に入っており、さらさらと張らずに歌っていく。「女犯の罪を」以下の重大といえば重大な件も、重くならない。罪の科よりは、運命に翻弄されたいい男を見せていく。時蔵の十六夜は、役を大きく見せようとするあせりなどみじんもなく、相手の菊五郎に合わせていくやり方で、ただただ哀しい。追い詰められたふたりの心中が決して成就しないところに悲喜劇があり、ふたりがともに舞台を踏んできた歴史があって、説得力を持つ。なんとも大人の十六夜清心である。(長谷部浩の劇評  TheaterGoer Directory)
黙阿弥の世話物の世界がタップリ堪能できます。