2019年2月12日火曜日

長谷部浩の劇評 2019年2月 歌舞伎座昼の部

二幕、板橋の切ろうに移ってから、丑松と牛夫の亀蔵とのやりとりに世話の愉しさがあり、また、喧嘩っ早い職人松也が登場してからは、いささか場が賑やかになる。この明るさを一転してお米の自死へと展開させるところが長谷川伸の真骨頂。思いのままにならぬ夫婦の悲しみを、菊五郎、時蔵、円熟の藝で見せる。 ふたりを翻弄し、騙していた料理人元締四郎兵衛(左團次)とその女房お今(東蔵)。この饐えたような雰囲気は、この年代にならないと出せない。世間的にいえば悪でも、こうしなければ生きてこられなかった世の厳しさが浮かび上がる。つまりは、この『暗闇の丑松』の世界には、善人や悪人はおらず、ただ非情な世間があるばかりなのであった。(長谷部浩の劇評  TheaterGoer Directory)
私の世代では辰之助です。33年前のショックは忘れられません。松緑の権太はおじいさんを思い出します。寿司桶を抱えての花道の引っ込み、実にカッコ良かったです。