2019年3月22日金曜日

上村以和於の劇評 2019年3月 歌舞伎座・国立小劇場

先月の吉右衛門の熊谷と、今月の仁左衛門の盛綱と、丸本物の頂点を示す作が二ヵ月続きで揃ったことになる。この二役、仁・吉互いに交換してもそれぞれにいいものだが、やはり吉の熊谷、仁の盛綱と、絶妙の形で棲み分けが出来ていることになる。白塗りの生締役がぴたりとはまる風姿、挙措の優美さと軽み、品格、といった仁左衛門の外面の美点がそのまま、役の盛綱と、演じる仁左衛門の芸の深まりとに、ものの見事に通い合っている。
これぞ「歌舞伎」という名舞台が2ヶ月観られたことは、この上ない幸せです。
そのあとが「土佐将監閑居の場」、つまりいつもの『吃又』になるわけだが、この一幕は六代目菊五郎以来の、若き芸術家の苦悩という近代的解釈と緻密な演出が出来上がっているから、こう続けてみると、「高嶋館」の浪漫的な奇跡劇のトーンと水と油の感もある。
六代目の解釈が絶対ではないと常々感じています。誰か殻を破って挑戦してほしいです。
(演劇評論家 上村以和於公式サイト | 歌舞伎の評論でお馴染みの上村以和於です。)