2019年11月9日土曜日

渡辺保の劇評 2019年11月 歌舞伎座

菊五郎の「髪結新三」がいい。  張る所は張り、突込むところは突込む緩急自在の自然さが世話物の手本であ る。ほとんど素に近い捨てぜりふの軽さがあるかと思えば、時代になるところ もあるその芝居のイキの差し引きが、近頃とかく忘れられがちな世話物の芸の 面白さである。  それに今回の舞台はそういう菊五郎の眼がすみずみまで行き届いているのが いい。
鰹売りは菊十郎から橘太郎へ、そして秀調の車力の善八は今も最高です。
染五郎の子獅子は、歌舞伎座の 所作台が割れるかと思うほどの足拍子で、体を十分使うのはいいがさなからア スリートの如く。元気いっぱいといえば聞こえはいいが、足拍子は力で踏むの ではなく芸で踏むのだろう。力まかせに踏むだけでは観客の心には響かない。 それを見て高麗屋の将来を担うこの人に早く芸の本道の基本を身につけてほし いと思った。(2019年11月歌舞伎座)
元気だけでは長続きしませんね。