2020年1月11日土曜日

渡辺保の劇評 2020年1月 新橋演舞場

正月の新橋演舞場の秋元康作演出の新作舞踊劇「雪蛍恋乃滝」は、役者とし ての海老蔵の魅力がよく出て実に印象的であった。わずか五十五分の作品では あるが、黒装束の海老蔵の忍者稲妻が、風の如く、影の如く、闇に溶けるが如 く、沈黙と孤独のなかに生きる香りが、この人の魅力の一面を実によく現わし ている。むろん海老蔵にはほかの側面もある。しかしこの孤独な翳の深い寡黙 な姿は、その魅力のもっとも本質的な一つだろう。今まで、その魅力をこれほ ど純粋に見せた役は他にはなかった。
勸玄といい、ぼたんといい海 老蔵の愛情あふれるばかりである。(2020年1月新橋演舞場)