私はこの珍しい後半が面白かった。ただし直侍が三千歳を抱いて寝たというのはおかしい。原作では寮の前半と後半の間にもう一場あって、二人はちゃんと寝ている。ところが、今度のように清元が終わるとすぐ市之丞が出ると二人は寝ていないことになる。もう一工夫ほしいところである。(2005年12月国立劇場)
<原作では寮の前半と後半の間にもう一場あって>これが気になります。
清元の「冴え返る春の寒さに降る雨も~」直治郎が花道からでます。
戸口に行って鳴子が鳴って、新造が開けに来ます。
中に上がって三千歳の来るのを待ちます。
「知らせうれしく三千歳~」で襖が開いて三千歳登場。
新造が気をきかせて引っ込みます。ここで千代春が「あとでゆっくりおしげりなんし。」と言って入ります。
二人の逢瀬、色模様と清元にのって美しい振り事があって、いつもは、いきなり捕り手が来ます。今回は金子市之丞が出てきて・・・となります。
こう考えてみると寮の前半と後半の間に入る余地がない。寮の場をまとめて清元「忍逢春雪解」に仕立てたのではないでしょうか。千代春のセリフを踏まえて二人は寝たと思いますし、20日逢わなかった恋人同士が久しぶりに逢ったのですから、話しだけでは・・・と思います。私は清元にのって踊る振りの中で充分二人の行動が想像できます。最後の方で直はんが三千歳を抱くところ、このシーンは印象的ですし、全てを表現している気がします。雀右衛門の三千歳、菊五郎の直治郎で観た時はココはドッキリしました。雀右衛門ですから濃厚で抱かれる後ろ姿で思いを表現していました。原作ではどうなっているのか、非常に気になりますが、この場を清元に仕立てた演出は素晴らしいと思います。
同じ狂言でも、いつもと違う解釈や原作復活などで観られることは面白いことです。今後もこういう試みを期待致します。