「女房、父親、若い衆らが後ろでこっちが酔っていくように芝居してくれるから、宗五郎がうまくできるんです。全員のアンサンブルが大事」
直次郎は「しょっぱなから“きれい”で出ず、色ごとになるとき、手足をちょっと白く塗ります」。 自分も三回演じたことのある三千歳の役は、長男菊之助。「いっぺん、親子でやってみたかったから。教えておきたいなと思って」と話す。
(東京新聞:<歌舞伎>尾上菊五郎 世話のお家芸『魚屋宗五郎』『直侍』 江戸庶民の生活 写実的に見せる:伝統芸能(TOKYO Web))
私の大好きな演目です。江戸の香りが舞台いっぱいに漂ってきます。そしてその香りを一番感じさせてくれるのが菊五郎です。
宗五郎は、前に三越劇場で山川静夫との対談で取り上げた芝居で、その時に共演の人たちがうまく酔わせてくれる、アンサンブルが良くないとできない、というようなことを言っていました。湯呑みも手のサイズにあわせて特注するそうです。
先日、歌舞伎チャンネルで平成元年の初演の舞台を見ましたが、若い若い!本人が言って居られるように、考えて酔っているように感じました。今は自然に役に成りきれるようになったそうです。
女房おはまは梅幸、芝かん、田之助、時蔵、芝雀、・・・と見ていますが、今回は玉三郎が初役で演じます。あの綺麗な玉三郎が魚屋の女房をどう演じるか?これも楽しみです。
直次郎は大口寮の時に手足をちょっと白く塗っていたのですね。清元も名曲ですし、二人の色模様にしばしの間、酔いたいものです。
菊五郎はあまり役を教えるのが苦手といってますが、教えておきたいと思って、息子菊之助に三千歳の役をつけたというのはうれしいですね。
この狂言は黙阿弥が明治に“大江戸への郷愁”の思いで書いたと、宇野信夫が書いていましたが、実に江戸の市井に生きる人々の息吹が感じられます。