海老蔵の河津と雄鳥の精、菊之助の傾城喜瀬川と雌鳥の精、松緑の俣野と、その年配といい、芸の背丈といい、キレイさといい、三人が丁度揃って今が盛りの満開の桜の如き絢爛さ。これはこれで、立派な三枚続きの平成の錦絵。(2009年5月歌舞伎座)
今月は團菊祭とつけてないが、菊五郎劇団中心の座組で昼夜9本という盛り沢山です。私は3日に昼夜観劇しましたが、どれも楽しく観られました。踊りが多いといっても、地方が長唄、清元、常磐津、竹本と全部違っていて各々の雰囲気が味わえて面白かったでず。
昼の部の「暫」は歌舞伎座の大舞台一杯に力溢れるカラッとした風が吹き通りました。セリフが難とご指摘ですが、それほど感じませんでした。
次は人間国宝お二人の踊り二題。「寿猩々」の富十郎の踊りは、独特の足の動き、目の使い方一つで回りの景色が分かる踊りでした。芝かんの「手習子」はいつも説明的すぎる踊りがそんなに気にならず、可愛かったです。前に梅幸が話していましたが、12,3才なら7,8つ(ななやっつ)の気持ちで踊るのだそうです。
菊五郎初役の「加賀鳶」、勢揃いの場はいかにも江戸の一ページを見るようです。梅吉が出てきて一言セリフを言うと、途端に黙阿弥の世界になります。道玄は悪であっても憎々しくない愛嬌ある按摩ですね。赤門前の場では、間が実に良くて流石という感じです。
昼の切りは「戻駕」、紫野、大徳寺のあたりの、のどかな春の風景で、浪花と吾妻の対照的な二人が好一対です。この踊りは古風で歌舞伎らしく面白いです。もう一つ常磐津が大変結構で、耳も楽しいです。
夜の部は團十郎の「毛剃」から始まります。この役は成田屋のニンにあった役で大きくて良いのですが、セリフが博多なまり(長崎に訂正)のせいかはっきり聞こえませんでした。藤十郎の宗七は柔らかい和事の味が滲み出ていて、成田屋と対照的で良かったです。
清元「夕立」といえば、思い出すのは雀右衛門の滝川の濃厚な色気にドキっとしたことですね。今回は菊五郎の七之助のみだらな色気にドッキリ!振り付けが猿若清方とあり、前と違って滝川が慌てて掛けだしてくるという振りでした。
宇野信夫の人情劇「神田ばやし」は三津五郎が説明していた通り、海老蔵の違った面が見られて面白い。上手から流れる清元「神田祭」が効果満点で、この雰囲気を大事にしていって欲しいです。三津五郎の大家さんは申し分なく、梅枝のおみつは宇野信夫の世話ものにはかならず登場する綺麗な娘役をほほえましく演じていました。他脇役も好演。心温まるお芝居です。
夜の最後の「鴛鴦」は本当にこの三人ならではの一幕。綺麗だけでなく、役どころの性根もきっちり表現していて、見応えありました。この黄金コンビのこれからの活躍が楽しみです。