2009年2月26日木曜日

上村以和於 又五郎追悼

当時の染五郎・万之助で評判を取った山本周五郎の『さぶ』に出てくる、佃島の与力だか同心だか、温情をもって見守りながら厳しい態度で接するような役は、もちろん誰がやったって儲け役には違いないが、又五郎だと、その味わい・余韻が、何とも独特な趣きを持つ。ああいう又五郎は、ちょっと忘れがたい。(演劇評論家 上村以和於オフィシャルサイト)

上村以和於さんも又五郎について追悼記事を書かれています。



山本周五郎の『さぶ』は是非再演してもらいたいお芝居です。素晴らしい舞台でした。又五郎さんのなさった同心のお役がかなり重要なポジションで、感動的でした。人生の悲喜を経験した懐の深い人物を演じておられた、それはご自身の地が滲み出ていたように思います。今なら歌六さんあたりが適役でしょうか?



河村常雄の記事より 中村又五郎追悼

楽屋を訪れると「何やってんだ」という怒声が漏れてきた。穏やかなこの人には珍しいことなのでわけを聞くと、弟子が草履をきれいに揃えていない、きちっとするという気持ちを持たないと、それが舞台に現れるので叱ったという。舞台への厳しい姿勢を見た。(河村常雄の劇場見聞録 : エンタメ : YOMIURI ONLINE(読売新聞))

先代勘三郎が亡くなった時の勘九郎の新三に大家を務めた時のこと。研修生の「野崎村」の指導をおったドキュメントの時のコメント。そして楽屋での弟子への叱りごと。どれも又五郎さんの人となりが偲ばれます。



松緑の魚屋宗五郎

「『キザ』ではないと思いますが、楽屋で裾(すそ)の片方を持って歩く癖があって、周囲から先代、先々代に似ていると言われています。ただ、祖父は陽、父は陰。私は、性格や体格上、祖父に近いと思う」。今回使う片口や茶わんなどの小道具は二代目譲りという。  「オヤジ、おじいさんからは不可抗力のニオイを受け継いでいると思う。これらに兄さんの芸も合わせ、私という器で融合したところに、自分の進むべき道が見えてくる、と思っています」 (asahi.com(朝日新聞社):尾上松緑が初役で「魚宗」 「音羽屋の芸」模索中 -古典芸能 - 舞台)

最近の松緑の舞台を見ていると、やはり音羽屋の芸質を持っていると感じます。三津五郎と演じた新作「泥棒と殿様」では出てきた時に江戸っぽい香りを感じましたし、先だっての菊之助の静と踊った「吉野山」の忠信では二代目譲りの明るく派手な芸風だと思いました。注文は多々ありますが、精進して、音羽屋の芸をしっかり継承してもらいたいと願います。



中村又五郎さん天国へ!

先生、と呼ばせて頂きましたのは、ご承知の通り、私どもが学んだ<国立劇場歌舞伎俳優研修>の主任講師を、発足当初より御勤め下すっておられたからでございます。14期生として、2年間、本当に手取り足取り教えて頂きました。(梅之芝居日記)

又五郎さんの訃報を知りまして、びっくり致しました。ご高齢ではありましたが、お元気でいらしたのに・・・現歌舞伎座とともにサヨナラになってしまいました。



脇役で活躍していらした頃より、国立劇場歌舞伎俳優研修の主任講師を務められた又五郎さんのほうが印象に残っています。梅之さんもおっしゃっていますが、お世話になった役者さんは大勢で、彼等が現在の歌舞伎を支える大事な役者さんに成長している訳ですから、その功績は計りしれません。



ご冥福を心よりお祈り申し上げます。



2009年2月19日木曜日

梅玉のひとりごと 2009年2月

梅丸が音羽屋さんからお名指しをいただき太刀持ちをさせていただいております。本興行で3度目となりますが、一番"慣れ"が出るころなので、毎日が初日と注意いたしております。(baigyoku.com ひとりごと)

梅玉さんの義経は成駒屋型で父歌右衛門に教わったと書かれています。最近は梅玉さんのに見慣れていて、梅幸の音羽屋型はどうだったかしらと思います。要は型は何であれ、義経の心があれば良いのだと思います。



太刀持ちは富樫の役者さんのお名指しなんですね。梅丸くん、中学生になるようですね、どうりでしっかりした太刀持ちでした。



近藤瑞男の劇評 2009年2月歌舞伎座

「人情噺(ばなし)文七元結(もっとい)」で菊五郎が生き生きと江戸っ子ぶりを見せる。女房お兼に時蔵、文七に菊之助。鳶頭(とびがしら)に吉右衛門が出演、豪華な幕切れになった。(東京新聞:<評>歌舞伎座『2月大歌舞伎』 大きさと人間味の吉右衛門・弁慶:伝統芸能(TOKYO Web))

「勧進帳」に関してはコメント済みなので、「文七元結」について書くことにします。筋が分かっていても、楽しく笑え、人情味豊かな作品で、菊五郎が江戸時代に生きているように演じてくれるので、自分も江戸へタイムスリップした気になりました。ワキが豪華はよいのですが、かえってまとまりが悪く、菊五郎劇団ですから手慣れた人を起用したほうが良かったのではと思います。



2009年2月16日月曜日

三津五郎の演目豆知識 「蘭平物狂」

今回は、消防の出初式でおなじみのはしご乗りのプロである五区五番組の頭の伊藤さんに縄のかけ方を指導していただきました。(三津五郎の部屋)

菊五郎劇団の財産ともいえる大立ち回り、先人の考案や工夫でとても素晴らしい場になっていますが、梯子の縄かけも本格的、全員のチームワークの良さ、信頼できる仲間達により、構成されているのだと、改めて感じます。怪我のないよう祈るばかりです。



第16回読売演劇大賞 

歌舞伎に新しい粧(よそお)いが加えられ、それが観客層のひろがりに役だっているのは、歓迎される事態と言っていい。だがそれは一方に、まっとうな歌舞伎のまっとうな伝承のつみ重ねという確固とした基盤があって、初めて効果を発揮するものだ。そのまっとうな歌舞伎の旗手として、昨今の中村吉右衛門の充実ぶりには目を瞠(みは)るものがある。(第16回読売演劇大賞発表 : 読売演劇大賞 : 読売新聞の顕彰事業 : イベント : 読売新聞)

選考委員特別賞に吉右衛門が選ばれました。



昨年の播磨屋の舞台は、どれも見終わったあとに満足感が得られる舞台でした。そして、その波は今年も続いています。正攻法な演技力は後進の役者さんに見習って頂きたいです。



御受賞、うれしく思います。おめでとうございます。



新人に与えられる杉村春子賞には中村勘太郎が受賞しました。



いつも爽やかで清々しく、良い素質を持っていると感じます。新人賞にぴったりの役者さんです。今後の活躍を期待します。



2009年2月6日金曜日

五月大歌舞伎 新橋演舞場5月

歌舞伎美人 | 五月大歌舞伎の演目と配役



今年も吉右衛門中心の公演です。



芝雀の雪姫、福助のお染の七役、女形二人の活躍が期待されます。吉右衛門はらくだと鬼平と軽い演目で、丸本物の重厚なお役と違う顔が楽しめそうです。



2009年2月5日木曜日

必殺仕事人 2月6日

亀治郎出演



http://www.tv-asahi.co.jp/bangumi/



河村常雄の劇場見聞録 市川團十郎インタビュー

市川團十郎インタビュー(市川團十郎in「象引」(四) : 河村常雄の劇場見聞録 : エンタメ : YOMIURI ONLINE(読売新聞))

復活狂言「象引」について、十八番の復活に対する親子の考え、海老蔵のこと等4回にわたって載っています。



渡辺保の劇評 2009年2月歌舞伎座

平成の「勧進帳」(2009年2月歌舞伎座)

当代の最高と絶賛しています。私はそれぞれが良くても、三役のコンビがよくないと良い舞台にはならないと思います。その点、今回の配役はベストだと思います。明日の観劇が楽しみです。



追記



5日に行ってきました。「勧進帳」幕が開いた途端、いつもと空気が違います。舞台に乗っている全員が、この劇場で最後の「勧進帳」という思いが伝わってきます。素晴らしい弁慶、富樫、義経、四天王でした。私は二代目松緑の弁慶が良かったので、松緑亡き後どうも物足りない感じでした。(十一代目團十郎の弁慶は印象に残っているものの十代でしたから記憶が遠く、八代目幸四郎は東宝へ行った為あまり見る機会がなかったので、一番二代目松緑の弁慶を見たことになります)



「勧進帳」は舞踊劇と言われていますが、むしろ音楽劇だと思います。長唄の地方に役者のセリフ、鳴り物の音、それらが渾然一体となり舞台を作るのだと思います。今回の「勧進帳」は吉右衛門の弁慶と菊五郎の富樫の声の良さと、セリフのうまさが実に音楽的で、問答の緊張感たっぷりの場面も、オーケストラのフォルテシモの盛り上がりのようでした。この二人が良くても義経がダメですと台無しですが、梅玉の義経も大変良く、梅幸亡き後この人が一番でしょう。



何十回も見てきた「勧進帳」ですが、今回のを見てやっと二代目松緑のに追いついたという気がしました。弁慶は申し分ないのに~義経が良くない~富樫とのバランスが悪い~長唄がお粗末~等、全てが満足出来る「勧進帳」ではなかった。サヨナラ公演の今月の「勧進帳」が渡辺保さんが言われたように平成の「勧進帳」と輝かしい一ページを飾るでしょう。



三津五郎の今月の役どころ 2009年2月

現在の歌舞伎座では最後の上演になるでしょうから、松緑のおじさん、父、辰之助のお兄さん、立ち回りを作って下さった八重之助さんほか、この狂言にかかわり、育て、愛した皆さんの思いを乗せて、心をこめて演じたいと思っております。なお五十歳を超えて蘭平を勤めるのは私が初めてとなるはずです。立ち回りで足がもつれないように、気をつけたいと思います(笑)。(今月のスケジュール)

蘭平というと、どうしても立ち回りを思い出してしまいますが、松緑さんの教えは前半をしっかりとというお話です。たっぷりと見せて頂きましょう。



皆さん、現在の歌舞伎座では最後の上演になるという意識が強いようですね。何もなければ淡々と過ぎていくのでしょうけれど、自分の身体や芸のことを考える区切りのような気がします。



玉三郎の今月のコメント 2009年2月

現在の歌舞伎座で「鷺娘」を上演致しますことは、この度が最後だと思っております。予測ではございますが、約5年先の新歌舞伎座が予想通り完成しましたときには「鷺娘」をひと月努めることは出来ないと考えております。1月公演が終演しましてから自分の身体のことと共に考えておりましたが、1月の幕が開きましてお客様の中にも何となく、そういう思いでご覧になって下さっている方もいらっしゃるのではないかという雰囲気が致しまして、私としては本当に感無量でございました。(坂東玉三郎ページ)

降りしきる雪の中で一心に舞う鷺の精、何てステキな舞台だったでしょう。幕開きの雪音、初々しい娘の踊り、華麗でかつ切ない責苦の段切れ、脳裏に焼き付けてずっと記憶しておきます。玉三郎さんの潔い発言に拍手したい。若い時は良かったのに、流石に年は争えない~こう言われるのが一番辛いのだと思います。年齢を経ても良い味が出せるお役も沢山ありますから、更なる発展に期待しましょう。