平成の「勧進帳」(2009年2月歌舞伎座)
当代の最高と絶賛しています。私はそれぞれが良くても、三役のコンビがよくないと良い舞台にはならないと思います。その点、今回の配役はベストだと思います。明日の観劇が楽しみです。
追記
5日に行ってきました。「勧進帳」幕が開いた途端、いつもと空気が違います。舞台に乗っている全員が、この劇場で最後の「勧進帳」という思いが伝わってきます。素晴らしい弁慶、富樫、義経、四天王でした。私は二代目松緑の弁慶が良かったので、松緑亡き後どうも物足りない感じでした。(十一代目團十郎の弁慶は印象に残っているものの十代でしたから記憶が遠く、八代目幸四郎は東宝へ行った為あまり見る機会がなかったので、一番二代目松緑の弁慶を見たことになります)
「勧進帳」は舞踊劇と言われていますが、むしろ音楽劇だと思います。長唄の地方に役者のセリフ、鳴り物の音、それらが渾然一体となり舞台を作るのだと思います。今回の「勧進帳」は吉右衛門の弁慶と菊五郎の富樫の声の良さと、セリフのうまさが実に音楽的で、問答の緊張感たっぷりの場面も、オーケストラのフォルテシモの盛り上がりのようでした。この二人が良くても義経がダメですと台無しですが、梅玉の義経も大変良く、梅幸亡き後この人が一番でしょう。
何十回も見てきた「勧進帳」ですが、今回のを見てやっと二代目松緑のに追いついたという気がしました。弁慶は申し分ないのに~義経が良くない~富樫とのバランスが悪い~長唄がお粗末~等、全てが満足出来る「勧進帳」ではなかった。サヨナラ公演の今月の「勧進帳」が渡辺保さんが言われたように平成の「勧進帳」と輝かしい一ページを飾るでしょう。