2017年6月6日火曜日

渡辺保の劇評 2017年6月 歌舞伎座

大詰になると、そのお蔦がガラリと変わってしっかりしたまことに怜悧な女 になってうまい。私はいままで「一本刀」は茂兵衛が十年間に変わる芝居だと 思っていたが、実はこの十年で変わったのはお蔦も同じであることを改めて思 った。
もう一つの傑作は猿弥の船戸の弥八である。序幕の手強さ、とぼけた可笑し さといい、大詰で力士コンプレックスから図抜けた大男に出会って、十年も前 の茂兵衛の頭突きを思い出して腹をおさえるのがおかしい。魚惣といい、これ といい、猿弥今月大当たり(2017年6月歌舞伎座)
お蔦といえば、私は6世歌右衛門が忘れられません。揚巻、八ツ橋より良かった。序幕の崩れた女がすっかり気質の女房になっていたのが素晴らしかったです。
猿弥大当たりとのこと。個性が光っていますね。