2017年9月11日月曜日

石井啓夫の劇評 2017年9月 歌舞伎座

吉右衛門が、死を覚悟して後事に思いをはせる「歎息なして…」の語りにつれ、顔を硬直させる。無言の容貌に宿る芝居の醍醐味(だいごみ)。竹本葵太夫の炎のような浄瑠璃も、名演に火をつける。染五郎初役の水野の作りも眼を射る。白塗りに映える憂愁。含みある面立ちに人間性の分の悪さをあらわにする。見事な水野像だ。(【鑑賞眼】芝居も極付、感動の長兵衛 歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」 - 産経ニュース)
吉右衛門の長兵衛が極付。葵太夫の浄瑠璃、染五郎の水野もよろしい。