2017年9月7日木曜日

渡辺保の劇評 2017年9月 歌舞伎座

むろん「湯殿の長兵衛」はいつ見ても江戸ッ子の男一匹、意地の張り合いか ら殺される男の話であるが、今度はそうではなかった。死に場所を自ら発見す る男の話であった。
吉右衛門の樋口は、前半花道のはなやかさから、梶原に目通りしての物語の うまさが、浮き立つようで面白い。後半は「権四郎、頭が高い」で門口の柱に つかまって向こうを見込んでのキマリ、二重に上がりかけて振り返っての裏見 得、表になっての大見得まで錦絵の美しさ。これぞ歌舞伎という味わいで堪能 させる。(2017年9月歌舞伎座)
昼夜とも吉右衛門の魅力いっぱいです。