2017年10月13日金曜日

マハーバーラタ戦記  稽古場日記 後篇

「第六場 競技場」では、両花道を設えた歌舞伎座の空間の広がりが、屋外での弓の試合という設定に存分に活かされます。そしてこの場面では、数日前に楽屋内の稽古場で目にした光景が、そのときの驚きとともに甦ってきました。  その驚きとは、迦楼奈(カルナ)や阿龍樹雷(アルジュラ)によって放たれた矢の行方を追う、稽古場にいた登場人物たちの視線の先がほぼ一致していたことです。物語の設定に則して、歌舞伎座という劇場空間を想定して、矢はどう飛んでいくのがあるべき形なのかをそれぞれが思い描いたら、同じだったということ⁉  きっとそれは、歌舞伎俳優にとって歌舞伎座というホームグラウンドの空間が、彼ら一人ひとりの身体のなかに感覚としてしっかりと入っている、ということなのでしょう。そう感じさせられたのは何もその場面に限ったことでなく、舞台上での何気ないやりとりを見ているときにも多々ありました。(稽古場日記 後篇 | 歌舞伎座「芸術祭十月大歌舞伎」極付印度伝 マハーバーラタ戦記)
空間を把握するのは難しいことです。それが皆さん分かっているというのは驚きです。