2018年1月10日水曜日

渡辺保の劇評 2018年1月 新橋演舞場昼の部

獅童は、こういう役になると古怪なマスクが生きて、この狂言に好く似合っ た。うまい企画である。
七役中一番の 出来はこの化生。ことに右団次の修験者が上手に立身、海老蔵の化生が下手で 片膝立てて長袴を舞台端へ流しての大見得がこの一幕でもっとも印象的でもあ り、海老蔵の凄味と悪の芸風の魅力が一番色濃く出たところでもあった。
海老蔵の「口上」は、金襖に三升の紋の広間に緋毛氈を敷いて、鉞髷に黒紋 付、柿色の裃でただ一人の口上。まことにスッキリしている。後見は斎入。吉 例によって金襖を払うと千畳敷になって「にらみ」を見せる。古来悪霊を払う という「にらみ」に海老蔵らしい凄味があるところがいかにも悪霊を払う勢い と力で、父十二代目団十郎よりも祖父十一代目を彷彿とさせる。(2018年1月新橋演舞場)
海老蔵のにらみで一年の幕開け、誠に結構。