白鸚は首実検でわが子の首と確認したときから父親の嘆きを塗り込める。その嘆きを見ると、松王は大名のような大人物ではなく舎人である。どこにでもいる父親である。それでいて大きな父性愛が作品のスケールを大きくする。 この白鸚、重鎮の藤十郎、ベテランの梅玉と魁春、急成長の雀右衛門という豪華な顔ぶれに猿之助と東蔵によるご馳走が付いて大型襲名にふさわしい舞台になった。(河村常雄の新劇場見聞録)