2018年1月15日月曜日

渡辺保の劇評 2018年1月 浅草公会堂

ことに私が感心したのは幕切れ。門口をトンと閉めてフッと絶望的な表情に なる。見ていて思わず与兵衛はこれからどうするのだろうかと思ってしまった。 せっかく召し出しに預って職を得、親の名前も継いだばかり。しかしそれも今 日一日でフイになるだろう。この男は家族のために人生を棒に振った。そうな った人生をジッと見詰める男の表情が印象的であった。  新鮮な与兵衛である。
「京人形」は、巳之助の左甚五郎が踊りのうまさを見せる。軽く踊ってはん なりとした面白さであった。巳之助は今日の歌舞伎界で松緑に次ぐ踊り手。も っとしっかりした一幕を見たかった。人形の小車太夫は新悟。この人のどこか 無表情なところがこの役に合って、巳之助といいコンビ。(2018年1月浅草公会堂)
歌昇は正統派のしっかりした芝居ができる人ですね。松也の青果物は将来が期待できそうです。巳之助は短い時間だったけれど父の教えが身についているのでしょう。