2018年5月7日月曜日

渡辺保の劇評 2018年5月 歌舞伎座

どうして「弁天小僧」のような芝居でこんな実感が起きたのか。  一つは菊五郎の弁天小僧と左団次の南郷力丸が芝居とは思えぬリアリティに 達したいたからであり、もう一つは周囲の役々のアンサンブルが水も洩らさぬ 緊迫感を持っていたからである。菊五郎の目が舞台のスミズミまで行き届いて いるのがよくわかった。演劇ファン必見の舞台である。
黙阿弥の芝居の魅力が100%以上に感じられる舞台です。
なかでは鳴神が図抜けて第一等の出来。その色気といい、線の太 さといい、鷹揚な愛嬌といい、役が手に入って来た余裕といい、いい鳴神であ る。雲の絶間姫との濡れ場も菊之助の雲の絶間姫との釣り合いもよく、この通 しでは全幕中一番の出来である。(2018年5月歌舞伎座)
将来の團菊の代表作になるでしょう。