本舞台には、能の地謡と囃子方がならんで、「葵の上」を歌舞伎舞台であえて上演しているかのようなしつらえである。そこに花道に面をつけた能役者が、七三のスッポンから迫り上がる。本舞台に向かうと、雀右衛門の六条御息所に触れる。六条が複数いるとのがいけないとか理屈をいうつもりはない。異なった修業を行ってきた身体が、さしたる手立てを書いたまま、身体が触れあってしまう。そこには、戦慄と驚愕があるだけで、感動はなかった。ありえないことが起こっている衝撃に打ちのめされた。(長谷部浩の劇評 TheaterGoer Directory: 【劇評114】海老蔵が試みた「事件」)海老蔵の着想は良いと思いますが、絡み方に問題があるようです。