2019年6月15日土曜日

矢内賢二の劇評 2019年6月 歌舞伎座

中村吉右衛門の梶原平三景時。自在のせりふ回し、見得(みえ)の形の良さ、輝くような顔の立派さ。理屈抜きにわくわくするような面白さである。それでいて合戦の物語は現場を見るようにリアルで、六郎太夫の話を無言で聞く思い入れのうちに梶原の考えの筋道が明確に浮かび上がってくる。
見ものは「謁見(えっけん)の場」の松本白鸚のポチョムキン。政治家の怜悧(れいり)と冷酷を圧倒的な貫禄で描く。(東京新聞:<評>歌舞伎座「六月大歌舞伎」 仁左衛門、緻密な人物表現:伝統芸能(TOKYO Web))