7月の歌舞伎座は、まだ初舞台もすませていない勸玄坊やの『外郎売』がお目当てで昼の部が即日完売、こちらはめでたく演じ切ったが、夜の部の「成田千本桜」の海老蔵十三團が中途でエンスト、幾日間かが休演という椿事出来(しゅったい)となった。
父親不在でも立派に外郎売を演じたことは語り草になるでしょう。恐るべし、成田屋の跡継ぎです。
是非ともこれしきのところで満足して終わってもらいたくない私としては、権太はきちんとした形でやれば良き権太であり得るであろうし、知盛だってあの丈高い役者ぶりから言っても夢はまだ捨てたくないとだけは、書き添えておこう。
三代目猿之助を崇拝し、自分も演じてみたいという思いから、アレコレ考えたのだと思いますが、無理に13役にしなくても良かったのにと思いました。
なかでも『素襖落』で姫御寮をつとめる児太郎に目を瞠った。その凛としたたたずまい、気品と風情。若い人をやたらに持ち上げるのは慎むべきかもしれないが、親まさり、いやひょっとすると祖父まさりかと、筆を滑らせたくなる。
ワー! 児太郎出ずっぱり!此のところ目が離せません。良い女形に成長するでしょう。
(随談第621回 13團、児太郎、安美錦 | 演劇評論家 上村以和於公式サイト)