先月に続いて四部制の公演。第二部「色彩間苅豆(いろもようちょっとかりまめ) かさね」が歌舞伎味たっぷりでおもしろい。ことに市川猿之助のかさねに真女形とは違う味があっていい。クドキには一途(いちず)な恋の熱情と、男に裏切られ恐ろしい因果にからめ取られる哀れさとが濃厚ににじむ。祟(たた)りによって変貌してからは、与右衛門とからむ細かい動きや見得(みえ)の形が巧みで、ヌルリとした感触の異様さ、不気味さが漂う。松本幸四郎の与右衛門と、二人のイキがよく合っている上に、芸で競い合う気分が感じられて見ごたえがある。(<評>歌舞伎座「九月大歌舞伎」 競い合う猿之助、幸四郎:東京新聞 TOKYO Web)
これぞ歌舞伎の楽しみと満足感あり。