2020年10月17日土曜日

矢内賢二の劇評 2020年10月 国立大劇場・歌舞伎座

 見慣れた演目と思いのほか、娘の突然の死を突き付けられた家族の情が改めてしみじみと胸に迫った。中村時蔵のおはま、市村萬次郎の菊茶屋女房、市川団蔵の太兵衛、河原崎権十郎の三吉、中村梅枝のおなぎまで、隙のない鉄壁のアンサンブルが芝居の快いリズムを支える。

歌舞伎座は第三部「梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)」の片岡仁左衛門がいい。ことに刀の目利きや物語で義太夫に乗る具合のおもしろさ。また六郎太夫を諭すせりふに滋味があふれる。(<評>菊五郎の宗五郎 胸に迫る絶品 国立劇場 10月歌舞伎公演など:東京新聞 TOKYO Web)