鴈治郎の伊左衛門、扇雀の夕霧。どちらを見ても亡き藤十郎の面影。和事と 女形の藤十郎の芸を両面に分けての二人の舞である。「こんな縁が唐にもあろ か」と「由縁の月」の一節の辺り、夕霧が履む足拍子が遠く藤十郎を思わせて 陶然とさせる。
吉右衛門も歳と共に芸風が変わって、初代吉右衛門に生き写しの愛嬌、艶が出 て来た。歳を取れば取ったでまたそれなりに別な持ち味が出て来るのが、歌舞 伎の芸の面白さ、その変わって行く持ち味が今月一番の見ものである。(2021年1月歌舞伎座)