2021年5月24日月曜日

矢内賢二の劇評 2021年5月 歌舞伎座

 

尾上菊之助の「春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)」に見応えがある。初々しくきりりと引き締まった小姓の風情。踊りは形の一つ一つが美しく決まってたっぷりとした余裕と明るさがある。
「土蜘(つちぐも)」は上演時間の制約により間狂言(あいきょうげん)をカット。尾上松緑の僧智籌(ちちゅう)実は土蜘の精に暗い凄味(すごみ)があり、市川猿之助の源頼光が凜然(りんぜん)として舞台を一段と大きくしている。寺嶋眞秀(まほろ)の太刀持(たちもち)がしっかりしていて目を引く。(<歌舞伎評 矢内賢二>歌舞伎座「五月大歌舞伎」など 菊五郎の勘平に円熟の味:東京新聞 TOKYO Web)