今月の歌舞伎座はこの権八が一番の見もの。最近の「鈴ヶ森」の中でも大出来。六代目、梅幸、七代目と音羽屋四代の名舞台である。たとえば片足の爪先が、もう片方の足の土踏まずに入って、片仮名の「トの字」になる足遣い、あるいは片足の土踏まずにもう片足の踵が行くという具合の足遣いの難しさがきれいであざやかを極める。(2021年7月歌舞伎座 – 渡辺保の歌舞伎劇評)